パニック物の原点『渇きの海』アーサー・C・クラーク
『渇きの海』(かわきのうみ、原題”A Fall of Moondust”)とはアーサー・C・クラークが1961年に発表した長編SF小説。1963年度ヒューゴー賞ノミネート作品。
渇きの海とは月面に広がる海部分のこと。
20代の頃にたいして期待もせずに読んだが、これは面白かった。
近未来の月面で砂上遊覧船「セレーネ号」が砂の海に沈没。
月面の砂は深く微細でその層が電磁波を通さないため、無線連絡は不可能だ。
このままでは砂の断熱作用で船内の熱排出ができず、温度上昇が致命的になるのは時間の問題である。
そんな中、ある男が偶然に遊覧船の痕跡を発見する。
困難な状況の中での救助隊と船内の乗員・乗客の様子がカットバックされる描写は、のちの航空機パニック物にそっくりである。
最初はこちらがパクったのではないかと思ったが、発表は航空機パニック物のほうが後である。おそらく何らかの形で参考にされたのではないか。
Wikipediaによれば、
かつて本格的な月面探査が行われるまでは、月の細かい砂(レゴリス)は重いものを支えられないのではないかといわれていた。中には、レゴリスは特殊な電磁気的条件により水のように流動しているとされる仮説まで出された。『渇きの海』はこの仮説に基づき描かれており、劇中でもそのような描写が見られる。
それほど分厚い本ではないので一気に読めると思う。
古典的SFのオススメ!