将棋 昇級をかけた鬼勝負!

2020年7月19日 オフ 投稿者: animeoyagi

つい先日、藤井聡太君がわずか17歳で将棋のタイトル棋聖をとったそうで、たいしたものである。心からおめでとうを言いたい。

将棋界はこれから盛り上がっていくのだろうな。

振り返って自分が17歳の時に何をしていたのか思い出してみると、お袋の三面鏡を開き、その前で上半身裸になってブルース・リーの真似をしていたという……。

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それはさておき、自分の趣味は将棋である。

将棋ウォーズや町道場で腕を磨き昇級を重ねて行った。六十手前のおやじにしてはまあまあなんじゃないかと思っている。

将棋道場ではどうやって昇級してゆくのかというと、各級・各段位において、いいとこどりの12勝3敗以上とか15勝3敗以上なんて規定がある。何日か道場に通い、この勝敗を達成すればいいのである。

さて自分の鬼勝負だが、2級から1級を目指していた時の話である。

半年かけて勝ったり負けたりを繰り返し、とうとうあとふたつ勝てば1級に昇級というところまでこぎつけた。

あとたった二つ勝てばいいのである。

最初の対戦者はこれまで自分が4連勝していた相手だった。いわゆるカモである。

1勝いただきー! と心の中で万歳していたが、こういう場合こそ気を引き締めなければならない。

昔の人が言っていたではないか、勝って兜の緒を締めよと。

ところがこれがいけなかった。勝つ前から緒を締めてしまったせいで、攻め将棋の自分が柄にもなく慎重になり、やったことのない穴熊に組んでしまって持久戦模様になってしまった。

その後はじりじりと押され、良い所をひとつも出せず完敗してしまった。

これでもう一敗もできなくなってしまった。昇級するには連勝しかない!

嫌でも緊張感が増す中で、次の相手はこれまでほぼ互角の星の兄ちゃんである。

この兄ちゃんとの闘いは、自分が勝つときは逆転勝ち、兄ちゃんが勝つときはじっくりと押しつぶすような攻めで土俵を割ってしまうような感じだ。

この勝負もいつものようにじりじりと攻められ土俵際に追い詰められた。

よく将棋の大盤解説でプロ棋士の人が、「これは先手がやや有利ですねえ」なんて解説しているのを、

へえ、これでもう差がついているんだ? ボクには全然分かんないや、って見ていたんだが、

この時は自分の低い棋力でも、「これはハッキリ俺が不利だ!」って分かっちゃったのよ。

この時はもう頭の中を色々な思いが渦を巻いてね。だって負けたら半年間の努力がパーになるんだよ。

その時ふと浮かんだのが奨励会の三段リーグのこと。

将棋に人生をかけた若者が半年ごとに開かれるリーグ戦で戦い、上位2名だけがプロになれるという、それは大変なものなのだ。

最後に一敗し三位以下に転落しプロになれなかった者もいるという。

これは負けた時には目の前が真っ暗になるだろう。

ワシは将棋に人生なんて賭けていないが、それでもこれまで積み上げてきた半年間が水の泡になろうとしている時には、目の前がゆがむような心持になったのだ。

アマチュア低級の俺でこうなら、人生をかけた将棋に負けようとしているのが分かった時にはどのような気分になるのだろうか?


オール・イン 実録・奨励会三段リーグ [ 天野貴元 ]

この勝負、最後の最後でうっちゃりが決まり、99パーセント負けていた将棋を逆転した。

次の勝負にも何とか勝ち1級に昇級したが、嬉しさよりも、全力で頭を使ったせいで疲労困憊し、しばらくぼーっとしていた記憶がある。


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