平成アニメ話 先輩が教えてくれた演出術
自分が駆け出しの演出の頃、先輩方に演出術の話を聞くのが好きだった。
先輩たちは気のいい人たちが多く、仕事の合間の雑談や酒の席などで聞けば色々と答えてくれた。
ある日、打ち合わせが終わったところで登場人物の強弱をどう表すかという話に及んだ時、こんな方法があるよと先輩が教えてくれたのが、
「敵が登場したときには崖の上などに立ち、主人公を見下ろしている」
「戦いが終わり勝った主人公が高いところから負けた敵を見下ろしている」
自分はもう少し複雑な映像論を期待していたのだが、これを聞いた時にあまりのシンプルさと分かりやすさに目からウロコが落ちたようだった。
立ち位置の上下で強弱を表すという、聞けば誰でも納得する方法だ。
誤解する人はまずいないだろう。
エンターテイメントはこういう具合にわかり易くないといかんという一例だ(もちろんこれがベストだというわけではない)。
教えてくれたのは石崎すすむさん。
少年アシベ(1991年)と少年アシベ2(1992年)の監督さんで、高校時代に学生運動で東大安田講堂で暴れたことがあったそうだ。
石崎さんには色々とお世話になった。
若くして亡くなったのは残念である。