意外に苦労する アニメの登場人物の名前を視聴者に分からせる方法とタイミング
監督や脚本の私はいつも悩んでいる。
それは登場人物の名前をいつどうやって呼ぶかである。
例えば第1話で主人公のタカシがいつどうやって観客にタカシだと分からせればよいのか悩むのである。
一番手っ取り早いのは自己紹介だ。
「転校生の〇〇タカシです。よろしくおねがいします」
自然に主人公の名前が視聴者に一発でわかる素晴らしいシチュエーションだが、いくら学園物の多いアニメでも主人公が転校生である確率はそう高くない。
ではモノローグならどうか?
ちなみにモノローグとは心の声のことだ。
漫画原作や一人称小説が原作のアニメで多用されている。
「俺の名は〇〇タカシ。■■学園の高校2年生だ」
手っ取り早く視聴者に名前は伝わるが、個人的にはモノローグにはあまり頼りたくないのである。
できれば自然な感じに視聴者に伝えてみたいのだ。
ただモノローグに頼りたくないのはあくまで個人的な趣味の問題なので、別に否定しているわけではないのでそのへんはご理解いただきたい。
あとは客観的描写で構成されている作品にモノローグが不向きな場合がある。
では別な人物に呼ばせるのはどうか?
「ようタカシ、今日も遅刻か?」とか「ねえタカシ。相談があるから放課後屋上に来てちょうだい」
まあ自然ではあるが、この場合名字までは伝えにくい。
「よう〇〇タカシ、今日も遅刻か?」とか「ねえ〇〇タカシ。相談があるから放課後屋上に来てちょうだい」
というのはあまりにも不自然だ。
従って話のどこかで名字を伝えるシーンを作らなければならない。
アナウンサーが名前を連呼するという方法もあるだろう。
「大○翼くんの〇〇シュートだーー!」
ただしアニメではサッカーの試合をしない作品が多いので一般的手法とはならないだろう。
テロップを入れるという手がある。
バストアップサイズの登場人物の画面下あたりに、
「〇〇学園生徒会副会長 〇〇タカシ」と文字を入れるのだ。
この方法は多くの戦争物やヤクザ映画の『仁義なき戦い』などで多用されているが、どうしても雰囲気が重厚になるのでラブコメには向いていないと思う。
似たような方法で名札や宛名・名前の記名欄という手もある。
白衣のネームプレートとかテスト用紙の名前の欄で分からせる方法だ。
ただ、視聴中にうっかり意識がどこかへ行ってしまうと見逃すことがある。
メールの着信時などに起こり得るだろう。
せっかく映像で表現しても見ていないと思われたらおしまいだ。
ドアへの指はさみ防止グッズ【はさマンモス】1,700円から。
というわけで脚本家や監督は苦労しているのである。
アニメを鑑賞するさいにこの記事のことを心に留めておいて、いつどんな状態で登場人物の名前が分かるのか注意してみると意外に面白いかもしれません。
あ、ここでひとつ思い出した。
鉄腕アトムやルパン三世はタイトルで自己紹介を済ませているようなものだな。
作品タイトルが主人公の名前になっているのは得だな。
私は初見時に、ああ彼が主人公か、とすぐに分かったものな。
あ、もう一つ思い出した。
物語の最期まで主人公の名前がわからないというのがある。
アニメではないけど、セルジオ・レオーネ監督のガンマン三部作がそれ。
『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン』
どれも傑作なのでぜひご覧になってみてください。
アニメのキャラクターが互いを名前で呼び合う理由