撮影時代の先輩の教え 撮影で死なないために
アニメの撮影時代の話である。
昭和の末期で西暦でいえば1980年代の中ごろのことだ。
私が助手から独り立ちして撮影として二年目に突入した頃だったろうか。
タイムシートの撮影指示通り撮影するとどうも変な画面になってしまうカットがあった。
この時は何か変だなと思いつつ、タイムシート通りに撮影したのだからこれでよかろうとフィルムを現像に出してしまった。
その結果、翌日のラッシュで大変なことになった。
ラッシュで見るとやはりあのカットは変であった。
撮影監督を務めていた大先輩がムッとして言った。
「これを撮ったのは誰だ」
「俺です」
「なんでこんなに変なんだ」
「シート通り撮影したらこうなりました」
「お前はシートに死ねと書いてあったら死ぬのか?」
「えっ?」
「 お前はシートに死ねと書いてあったら死ぬのか?」
そうなのだ俺が馬鹿だったのだ。
タイムシートを免罪符にして撮影として何も頭を使っていなかったのだから。
変なカットがあった場合、スケジュールに余裕がある場合は演出に戻し、余裕がない場合はコンテを読んでそのカットに求められている絵を作って(作画するという意味ではない)シート通りではない旨メモをつけておくのがベストだろう。
この事件以来私はシートに死ねと書いてあっても死なないように気を付けるようになったのだ。