昭和 初めてのビデオデッキの思い出
アニメおやじの高校生まではアニメは放送されたらそれっきり。再放送がいつされるかなんて全く分からないのでそれは真剣にアニメを見たものさ。(以下の文章はじじい特有の話のてんこ盛りと記憶の美化が含まれています)
息をするのも瞬きするのももったいないぐらいの気分で全身全霊をかけて脳のメモリーに映像を焼きつける。
とにかく気合を入れて、この一期一会を大事にしていた。
録画なんてできないのでお目当てのアニメの放送時間には必ず家にいなければならない。だから友達や彼女の(当時も今もいないが)誘いを振り切って全速力で帰宅したものじゃ。
だから観終わった後の体力の消耗は半端なかったなあ。精魂尽き果てるとはこのことじゃった。
当時はアニメの放送本数も少なかったので、こんなことができたのかもしれない。
もしこの当時に深夜アニメがあったらワシは確実に廃人になっているか、もしくは早い時期に千の風になっていただろう。
さて1977年のことである。とうとうビデオデッキを購入したのじゃ。
Sonyのビデオデッキで25万円くらいしたかのう。現在の感覚で言えば50万くらいかなあ。高い買い物じゃ。
親を説得し半額出させて、残りの半分はワシの貯金で補填したのじゃ。
これで好きなアニメを録画し放題になってワシの生活環境はーーーーーほとんど何も変わらなかったのじゃ。
当時のビデオデッキはタイマーがついていなかったので番組が始まるときに録画ボタンを押さなければならなかった。
さらには……。これは若い人にはなかなか信じてもらえないのじゃが、ビデオの電源を入れて約30分本体を温めないと録画ができんかったのじゃ。
親に頼むという手もあったがオカンは昔も今も「ごめーん、忘れてたわー」の人なのだ。これでは任せることなど到底できない。
つまり友達や彼女の誘いを振り切るのが30分早くなってしまったわけだ。
おまけに録画ボタンを押してから実際にビデオテープに録画がされるまで約4秒のタイムラグがあったで、オープニングから録画するためには事前に電話で現在時間を確かめ(当時時報のサービスがあった)、放送開始5秒前に録画ボタンを押さなければならなかったのじゃ。
しかも当時のビデオテープの値段が2時間テープで5000円! 5000円だぞ!
CMを抜けば一本のビデオテープに5話分入れられるので、放送中はデッキの停止ボタンと録画ボタンを交互に押しまくっていたな。ついでに言うと「一時停止ボタン」すらついていなかった。
放送終了になると精魂尽き果てるを通り越すぐらい体力を持っていかれたものじゃ。
これ生活環境はビデオ導入前よりあきらかに悪化してるよな。