昭和の初体験 デヴィッド・リンチ
学生時代のことである。
日曜日に映画でも観ようということになり、友人二人と新宿駅の東口で待ち合わせた。
スマホのない時代の待ち合わせは大変でな。
10時アルタ前集合とかランドマークの前に集まっていたな。
ところが必ず遅刻するやつがいて、こいつがいつ到着するのかさっぱり分からない。
家を出たのか電車に乗っているのか全くの状況不明になる時がある。
そういう場合は事前に「30分だけ待つ」と決めて、来ない場合は置いてきぼりにする。
まあこの日は誰も遅れることなく集合できた。
無問題である。
問題があったのは映画館についてからで、何を見るかで揉めた。
二人の友人は「日本映画」と「洋画」を提案し、自分は当然のことで「アニメ」を推した。
三人であーでもない、こーでもないと議論したがまるでラチがあかない。
リーダー不在の団体は物事を決めるのにどこかの国のようにとても時間がかかるのである。
そこで自分は映画館の前にずらりと並んだポスターを示し、
「では、公平にこれなら俺は絶対観ない映画にしようではないか」
と提案した。
友人二人は不承不承といった感じで同意し絶対に観ないであろう映画を三人で選んだ。
それがコレである↓
『イレイザーヘッド』(Eraserhead)
1977年のアメリカのモノクロ映画で、 日本では1981年9月12日に公開されている。
監督は後の巨匠デヴィッド・リンチ。
内容は下の動画で確認していただきたい。
娯楽作品好きの自分にとっては一生作ろうとも思わないスタイルの映画だったが、この映画を観たという強烈な体験をしたのだった。
そういう意味では友人二人には感謝している。
後に『ぽてまよ(2007年)』の監督をした時に、三人で揉めた末に誰も観ない映画を観るというエピソードで使わせてもらった。
あーでもなければこの監督の作品とは一生出会わなかったか、体験するのがかなり遅れただろう。
帰りがけにつらつらとこの映画について考察してみたが、とにかく難解であった。
考察しようにも自分には手がかりを発見することすらできなかったので頭を抱えた。
というわけで途中で考えることを放棄した。
後にはそれでもこりずにこの監督の作品にチャレンジしたな。
そして、ロスト・ハイウェイ – Lost Highway (1997年、監督・脚本)とかマルホランド・ドライブ – Mulholland Dr. (2001年、監督・製作総指揮・脚本)を観てまた頭を抱える事になるのであった。