昭和アニメ話 令和では消えたリテーク セルガタ・セルゴミ・セル傷・影パカ
以前リテークに関しての記事を書いたが、今回はさらに絞ってセル時代のリテークに関して書いていこうと思う。
ちなみにセルとは透明な合成樹脂の板で厚さは0.25mmくらいの薄っぺらい下敷きのような物である。
それをタップにはめ込んで重ねて撮影するわけだ。
昭和・平成・令和 アニメ業界リテーク事情
撮影の様子は下の動画を参考にしてください。
この重ねたセルの上にガラス板を乗せて押さえつけて撮影するのだが、この押さえが適正もしくは一定でないとセルが少々ずれるのだ。
これを称してセルガタと言う。
PCで動画を作るようになって消えてしまったリテークだな。
また、撮影対象が暗い色をしたキャラクターや背景の場合、セルに付着したゴミがどうしても目立ってしまう。
セルの重ねが多ければ多いほど目立つ。
これをセルゴミと言う。
ところがこれをとるには時間がかかってな。
昔のTVシリーズではけっこうセルゴミが目立っているものが多いのだ。
ゴミをとるようになったの自分が撮影会社に入った80年代前半くらいからだ。
考えるにTVアニメは一過性のものだったが、自分らの世代からビデオで録画したアニメを観るようになり、繰り返して観れるようになったのが原因のひとつかもしれない。
TVアニメは過ぎ去るものではなく残るようになったのだ。
そしてセルは意外に柔らかいので表面に傷がつきやすく、照明次第ではこれが結構目立つのだ。
これをセル傷と言う。
これも消すのがなかなか大変でな。
PLフィルターが導入されるまで苦労したものさ。
ちなみに自分が初めてPLフィルター(偏光フィルター)の存在を知ったのは『風の谷のナウシカ(1984年)』で使われたと聞いたのが最初だ。
次は影パカだ。
セルに書かれた絵には裏から絵の具が塗ってある。
ベテランが塗るとその厚みは一定で特に厚くなることもない。
ところが新人や海外外注が塗るとやけに分厚く塗られてくることがある。
この状態で背景の上にセルを重ねた時、どうしても照明による影ができてしまう。
また先ほど説明したガラスの押さえが一定でないと影の大きさがコマごとに変わってしまい、やはり影パカの原因となる。
以上がぱっと思いつくフィルム撮影時代のリテークの一例だ。
また何か思いついたら記事にするのでよろしくおねがいします。