昭和アニメ話 昭和のアニメオタクのTV画面キャプ
現代はPCで好きなアニメの映像を楽しみ、気に入った場面を簡単にキャプチャーできる。
ところが昭和のテレビ番組でそれは不可能であった。
それでも可愛いあの娘の写真が欲しい。カッコいいメカの迫力あるシーンをこの手に入れたい、と思うのはオタクならぬヒトのココロを持った人間なら当然だろう。
そこで昭和のオタクたちは考えたのさ。
TV画面をカメラで撮影してしまおうじゃないかと。
1970年代後半の話である。
ところがカメラオタクではないニワカカメラマンが撮影すると、とても悲惨なことになるのだ。
まず、可愛いあの娘をしっかり撮ろうと思うあまりシャッター速度を早くしすぎてしまう。
その結果フィルム24枚ないし36枚が何も写っていない真っ黒けの写真となってしまうのだ。
フィルム代に現像費込で2千円くらいが吹っ飛んでいってしまう。
当時の物価を考えると泣くに泣けないぜ。
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そこで失敗をしないよう知り合いのカメラ部員あたりに聞くのは気の利いた方法だが、この撮影は実に密やかな行為なので他人に話すのはとても恥ずかしい。
でも今のままでは可愛いあの娘を手に入れる事ができない。
悶々と悩んでいるうちに天啓を得た。
確かフィルムは1/24で撮影されていると誰かが言っていた。
つまりシャッター速度を大体それくらいに合わせ、あとはカメラの絞りを何段階かに調節してゆけば、きっとうまくゆくかもしれん!
思いついたら即実行だ!
深夜、親が寝静まった頃を見計らってそっと居間に降り、部屋の明かりを点けないままTVのスイッチを入れる。
ビデオを再生しお目当てのシーン付近まで回しておく。
※初期のビデオ録画・再生機には一時停止ボタンが無かったのだ。
カメラを構えて再び再生。
可愛いあの娘が出てきた瞬間にシャッターを押す。
これを露出(絞り)を変えて何度か繰り返す。
三脚なんぞ買う余裕が無かったので、手ブレを起こさないよう脇をしっかり締めてシャッターを押す。
気配を感じた親が起き出してこないかビクビクしながらの撮影である。
さっきから可愛いあの娘と書いてはいるが、その娘のきわどいシーンだったりするのだ。
冷戦当時のソビエトに侵入した西側のスパイもきっとこんな気持ちで機密書類を撮影していただろう。
幸いにして親は目覚めず、撮影は終了した。
翌日カメラ店にフィルムを持って行き、現像と焼付を依頼した。
当時、現像には数日かかっていた。
わくわくしながら写真の入った封筒を受け取り、中を確かめた。
もちろん見事に写っていたぞ。
成功したのは1・2枚だったけどな。
現代のオタクたちは恵まれていると思うな。
えっ? 何を撮影したかって?
宇宙戦艦ヤマトのワープシーンの森雪さ。