昭和アニメ話 進行さんからの迷電話
1980年代の後半、自分がまだ演出助手だったころの話である。
4月になると新入社員がやってきて各部に配属されて社会の洗礼を浴びてゆくことになる。
その中でわりと可哀そうなのは地方出身の進行だ。
土地勘のないまま道路地図帳を持たされて車で回収に向かわねばならない。
当時は携帯電話は無く、カーナビも装備されていない。
当然新人進行は道に迷う。
会社を出て2・3時間戻ってこないなんてのはざらにあった。
とある進行が初めての回収に向かい4時間たっても5時間たっても戻って来ないことがあった。
連絡もない。
先輩たちは心配したがこちらから連絡する方法はない。
かつて出かけたままバックレる進行がいたがそのたぐいかもしれないと思っていたところに電話があった。
偶然近くにいた自分が出ると行方不明になっていた進行の困惑した声が聞こえた。
「すいません。ボク、今どこにいるのでしょうか?」