昭和・平成・令和 アニメ業界リテーク事情
リテークとは一度撮影されたものに不具合があった時にそれに手を加え修正することである。
リテークの内容としてはキャラのコスチュームなどのパーツが抜けているとか、そもそも服や髪の色を間違えたとか、シーンは夕方のはずなのに背景が昼間になっていたとか、キャラクターは歩いているはずなのに自動車で移動しているみたいに早く見えるとか、まあ様々なものがある。
あとは髪の毛が風になびいている時に途中で突然ハゲになってまたなびくなんてのはよくあったな。
自分が駆け出しの業界人だった昭和の後期の頃、リテークの数は総カットの10%ほどが望ましいと言われていた。
1話のカット数が300前後くらいなので10%といえば約30カットである。
これが15%だと、各ポジションから今回は多いと文句を言われ、20%だと演出や演助が撮影監督から呼び出され、セッキョーをくらったものさ。
まあセルでアニメを作っていた時代はこんな感じだった。
ちなみにセルとは厚さ0.25ミリほどの透明な塩化ビニールの薄い板みたいなものである。
板とは書いたが硬いものではなく、もう少しフニャフニャというかペラペラしたものだ。
平成に入ってアニメがパソコンで作られるようになるとリテークの数は飛躍的に増えた。
7割くらいがリテークなんてのがザラにある。
増えた原因はセルに比べて、割と簡単に細かい修正ができてしまうことにある。
セルの時代ならあきらめてOKにしていたカットがリテークになってしまうのだ。
パソコンで作るアニメのことをCGアニメと業界で読んでいるが、パソコンは凄いのな。
セル時代にカメラを使ってフィルムで撮影していた頃は夜中(というか早朝)4時までに現像所に撮影上がりのフィルムをいれると、14時に現像済みが上がってくる。
この4時から14時まではどうやったって映像の確認ができないので、全ポジションが休憩できた。
ここで作業の区切りができたのだ。
ところがCGになってからは、いつでも映像が確認できるので区切りが見えなくなってきたな。
V編といってTV局に納品できる状態になるまで2日とか3日とか現場を稼働させたこともあった。
もちろん休憩はとっているがセル時代に比べて作業行状況は過酷になった気がする。
その分、クオリティーはセル時代とは比べ物にならないくらい上がっている。
さらには平成時代より令和の現在のほうがクオリティーは上がっている気がする。
次の時代にはどうなっているのだろう?
まあ、その頃は私は千の風になっていると思うので知る由もないのだが。
もし見ることができたらこのブログで書いてみるよ。