自宅に初めてカラーテレビが来た日
自宅に初めてカラーテレビがやって来たのは1969年のことである。
人類が月面に到達した年であり、大阪の日本万国博覧会が開催される一年前だ。

届いたテレビは上部の写真にあるようながっちりとした作りで、20インチのモニターだったと思う。
20インチとは今の感覚では小さいのだが、当時としては巨大であった。
なにせ普通のテレビが14インチとか16インチくらいだったからだ。
値段も当時で20万円くらいしていたと思う。少年マガジンが60円の時代の20万だ。
親父、奮発したんだなあ。
一家総出のお祭り状態で梱包を解き、部屋の隅に備え付けた。これだけでも充分楽しかったなあ。
スイッチを入れて画像が現れた時は感慨深いものがあったね。
とうとうウチもカラーテレビ持ちの仲間入りかと。
さてこれからが大変だ。
今のテレビは自動的に画面が調整されて最初から程よい色合いでテレビを楽しめるのだが、当時のテレビにそんな機能はない。
映し出された相撲中継の力士の肌は妙に緑がかっていた。
そこで親父がテレビの裏にまわり色調整のつまみをまわし、それを母親・自分・弟の三人でモニターを見ながら、父親に指示を出す。
「緑、緑、まだ緑。ああ、赤くなった。赤い、赤い。ああっピンクになった!」
親父は一生懸命調整するがなかなかうまくいかない。そらそうだ、自分で画面を観ていないんだもの。
今にして思えば映像を鏡に映して見せてやればよかったなあと思うが、後の祭りだ。
結局10分ほど格闘し、
「もうこれでいい!」と親父が半切れぎみに言ったので色の調整作業はそこで終わった。
それからしばらくの間、我が家はなんでも赤っぽく映るテレビを観て過ごしたのだった。




