昭和アニメ話 生涯一度だけ発動した野生の勘
1979年 東京に来たばかりの頃、映画館を探すのには苦労した。
当時「ぴあ（2011年7月21日発売号を以て休刊）」「シティロード（1994年2月刊行の4・5月号をもって廃刊）」という映画館の上映内容とその場所がわかる雑誌が発売されていたが、上京したばかりの頃はその存在を知らず、苦労して映画館を探しだした。
その方法はまず渋谷や新宿などの大きな駅へ行き、駅前の人々の様子を見て、映画館に行きそうな人を見つけて後をつける。
これでたいてい映画館に行けた。
先の雑誌を知るまではこの手を使って映画館に行っていたのだ。
それから半年後には「ぴあ」や「シティロード」を片手に映画館めくりをしたものさ。
ある時のこと東京都杉並区の方南町の児童会館で太陽の王子ホルスの大冒険の上映会が開かれるのを知り慌てて蒲田の部屋を出た。
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電車を乗り継ぎ地下鉄丸ノ内線の方南町駅にたどり着いたのだが、そこで「ぴあ」を忘れてきたことに気がついた。
雑誌には上映会場の住所が書かれていたが覚えてはいない。
また雑誌を買おうにも貧乏なため持ち合わせはない。
上映開始の時間は刻々と迫っていた。
私は賭けに出た。
心を落ち着けて周囲を見渡し、上映会場の運気を探し出す。
精神を集中させるとそれが見えたような気がした。
私はためらうことなくその方向に向かってあるき出した。
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住宅地の中を10分ほど歩いていると緑に囲まれた場所があった。
それが上映会が行われる児童会館だったのだ。
たどり着くまで全く迷いなく進んできたのだった。
これを野生の勘と言うのだろうか？
実に不思議だが、現在までこれ一例だけの体験である。
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